IE教材

フォイヤーシュタイン媒介教育とは

 

発達の心配な子供を育てたことがあれば、おそらく経験すると思うのですが、お医者様やその関係者に
「あせらず、もう少し様子を見守りましょう。」といったことを言われます。
早く対策をとったほうがいいのでは?と考えている親は多くいると思うのですが、大概は逆のアドバイスを頂く結果となります。

そこには、認知の発達は自然発達である、という考えが根底にあるからです。
そこに一石を投じた博士がいました。それがフォイヤーシュタイン博士なのです。

 

『博士は、認知は変容するという理論を唱え、認知の変容を促進し発達させるためのIE教材を開発し、

多くの事例によって、この理論を検証してきました。
そして変容するためのサポート、関わりのあり方を<媒介>と呼んでいるのです。

媒介を受ける10人の学習者がいれば、媒介者と呼ばれる指導者の意図や目的は学習者との相互作用によって異なりをみせ、

極端に言えば、10通りの媒介となるのです。』
(理論詳細:NPO法人フォイヤーシュタインラーニングセンターHP)

 

フォイヤーシュタイン博士は、すばらしい媒介者としてヘレンケラーの師、サリバン先生を上げています。
ヘレンは出会った時は、勉強とか知識とか、そういった段階の話ではなく、目と耳の障害から、概念の形成や、世界の構成や秩序を知ることを奪われてしまった少女でした。サリバン先生はヘレンの世界の構築を手助けし、成し遂げた、まさしくすばらしい媒介者なのです。

 私どもが手本にすべき偉大な例ですが、私どもは1歩でも近づくように、子供たちの認知機能にどのような不全があるかを観察し、分析し、どのように媒介すれば、認知構築の手助けが出来るのかを考え、高い目標と意図を持って指導してゆくこと、そのことを常に考えて取り組んでおります。

 

フォイヤーシュタイン媒介教育の教材、IE教材

 

IEスタンダード 全14教材(点群の組織化、比較、分析的知覚、空間定位1、分類、時間的関係、家族関係、空間定位2、指示、数列、三段論法、 推移的関係、イラストレーション、表象的ステンシル・デザイン)
IEベーシック 幼児~ 全9教材 

  

 学習者の多くが最初に取り組む大切な教材、『点群の組織化』を例に挙げて、こども発達研究所での取り組みをご紹介致します。

 『点群の組織化』では、無数に散らばる星のように、無秩序の『点群』中から、子ども自身の力で、見本と同じ『点群』を見つける事により秩序立てて考える手法を身につけていきます。

 

『点群の組織化』と取り組むとき、直角や平行、正方形などなどの概念が重要な役割を果たすのですが、媒介者である私が、幼児であろうと障害があろうと、平行をいきなり教えはじめるので、驚かれる方が多いです。
でも現にほとんどの子供は理解が可能です。なぜ理解できるのでしょうか。多くの子どもたちは、平行という概念を言葉では説明は出来ないかもしれませんが、子供たちはなんとなく、既に知っているのです。

本棚は横棚が平行に並んでいますよね。少しでも斜めになると、本が滑り落ちたり、本棚の枠が傾いてしまったりすることを子供は知っているのです。 そのような共通の概念があちらこちらに存在することにも気づいてゆき、やがてその概念に、平行という名前がついているのだよ、と学習します。

 

ところが、本棚は本棚とそのまま認識して、その構造には意識が向かない子供たちがいます。
そういった子供は、けして頭が悪いわけではなく、違った見え方をしていると感じます。
写真のように覚えていたり、妙に細部に関心がいってそちらの方に焦点があったりです。同じものを見ていても、見え方が違う、違った見方をしている。
そういった子供たちに、構造の見方の形成を手伝いたいと考えています。

 

また、高学年や大人の方で、平行の概念はよく知っていても、ちゃんと知覚していない方も多くいらっしゃいます。
よく解っていても現実で実際にはその概念を利用していないのです。そういった方は、知性は高くても、生き辛さを感じていらっしゃるようです。 (アスペルガーやADHDと呼ばれている事が多い)
少しでも楽になれるお手伝いが出来ればと思っております。
(ここで取り上げた点群の組織化は、特別な空間技能が求められる技術者を選別する道具として開発されたものを博士がダイナミックに発展させたものでした。FIEの14の教材すべてが、創造的に考え、自立して生きる存在となることを意図して作られており、こども発達研究所には、大人の方もいらっしゃってます。)

 

 

フォイヤーシュタイン媒介教育体験談

 自閉症で知的障害の重かった息子にフォイヤーシュタイン媒介教育を実践してきたのですが、この教育に私が出会う前に感じていた事、そしてなぜフォイヤーシュタイン教育に惹かれることになったのかを紹介致します。

 

 一つ目のエピソードは、まだ息子が年長さんくらいの頃だったと思います。ある時幼児教材に、チューリップの絵が描いてあって、点を線を結ぶと、チューリップになるようになっていました。息子に鉛筆を持たせて促してみると、全く絵も背景も点も見えていないかのようにぐちゃぐちゃと線を書きなぐりました。

 チューリップであるとも認識しておらず、繋ぐための目安の点点も意味をなしておらず、教材製作者の意図はなんら感じ取っていませんでした。点を繋いでチューリップをかたどればいいと、普通の子供たちは難なく推測するが、いったいそれはどうしてできるのか。息子には点は点でしか無い様子だったのです。

 これが疑問の始まりでした。

 

 二つ目のエピソードは、天文台の観測に連れてゆき、望遠鏡をのぞかせてもらったり、星座を教えてもらったりしました。しかし、「あそこに烏座が見えます」と星座盤と見比べさせたところで、あんなに遠くにある星を指で正確に指し示すことは不可能で、息子にはあの星がどれを指すのか、見えているようには思えませんでした。

 いったいどうすれば、実際に指で指し示すことも出来ず、絵でこんな形の物、というふうに見せることもできない無数の星の中から、”あの星”が”(星座盤の)この星”だと正確に理解させることが出来るのでしょうか?

 

 点群の組織化というフォイヤーシュタイン教育の教材を一目見て、答えを見つけたと感じました。そしてその直観は正しかったのです。息子は学校でオリオン座などを習う頃には、容易に星座を見つけられるようになっていました。

 視力で見えると、構造が見えるは違います。世の社会構造などは、ほとんどが、視力で見ることが出来ないことばかりです。少しでも生きやすくなるように、子供たちの見える世界、その構築を助けることが出来ればと考えています。

 

体験者の声 抜粋

●通い初めの頃は対面になったときに左右が逆転してましたが、空間定位をしてからは理解力が上がりました。
昨日のエピソードですが、車に乗っていて左に北があり、右折すると北はどちらの方向になるかクイズを出したら、右折する前にちゃんと背中と答えてた事に感動しました。
実際、右折して背中に北がきて正解を確認できたら、本人も喜んでました。

通い初めの頃は、本を読むのも大変でしたし、あまり自分から本を手に取ることがなかったです。一字読みから脱出できたのもFIE(フォイヤーシュタイン媒介教育のこと)の効果が大きいと感じてます。

Tさん

●家でも、認知レッスンでの課題に取り組んでいた時期、1-2週間で、会話の中身が情緒的?になったような気がしました。
 どことなく、会話している時に、「通じた」感じが薄く、言い方が悪いんですが、どことなくロボットっぽいなぁと感じていたのです。 電話をしていても、私が言ったことをそのまま伝えてすぐ切っていたのが、パパと何十分も話してて、なんとか話題をつなげようという本人の意志も伺えるようになったのも、この時期でした。
当時の変化としては、時間感覚の育ちもあったかと思います。見通しを長めに把握したりするようになったとか。 認知が抜け落ちているのを補っていくと、全然関係なさそうなところも変わっていくんだなぁって感じたのを覚えています。 (注意:大変遠方のため、3回直接指導したあと、家庭で取り組む課題を与えオンラインで指導していました)

Aさん

●(息子は)初めての人、初めての空間、初めての行動をすごく嫌がります。少しでも拒否がはいるともう次がないので慎重に事を運びました。 まずは牧田先生に出会うことを始めなければならない事と、プラス自分のために 母親である私が『フォイヤーシュタイン』を受講することにしました。
わたしが受講してすごいな~と感じたのは・・・牧田先生の的確なアドバイスです。 それによって自分の脳の癖を知ることとなります。
知ることで反省もできました。子供と自分が真逆のとらえかたをするのでわたしの言い方は子供にとってはしんどかっただろうな~ということを知ることとなります。 だから子供への声かけの仕方も変えていくことが出来ました。

・・・中略・・・

(息子が)フォィヤーを初めて3回目ほどですがこの間こんな言葉を口にしました 『俺は今までの俺じゃないよ・・・Aコースがダメになっておかあさ~んってパニクルんじゃなくてBコースもあるってわかるし、できるよ』 って何気なくつぶやいていました。 まだフォィヤーを初めて3回目ですが牧田先生のアドバイスがすごい効果があるんだって感じられる言葉でした。 今までのあの子は大阪駅に行ってもここで降りてここに立ち寄ってという風にコースをきっちり決めてそのコース以外は立ち寄らない子でした 。だから私が・・・いつもと違うところへ行こうとするととても怒って大変でしたがコースの変更にも柔軟に対応できるようになりました。

Kさん

 

発達障害から自閉スペクトラム、グレーゾーンまで。

最近では日本でも、コグトレのような、グレーゾーンの子供たちの認知力を向上させる教材が出てきたおかげで、認知に対する理解が進みつつあります。
フォイヤーシュタイン教育のIE教材は、大人を含めた全ての一般の方が対象です。

全ての人が社会で生きていく上で、必要と認識されている認知分野が教材として体系化されています。
つまり、ごく普通の方だけど自分の仕事の効率性や理解力などに悩みを持たれているといった方から、子供から大人までの全てのグレーゾーンや、 発達障害で悩みを抱えられているような方まで、全ての方々に適していると言えます。

とてもすばらしい教材なのですが、席に着き鉛筆を使ってしっかり取り組める状態以上の人たちの物である、というのが困ったことでした。
多くの障害のある子供たちは、手の機能が不器用だったり、実際の具体物での学び経験が乏しく、いきなり紙ベースの教材では学べないことが多いのです。

そこで、これらの認知力を伸ばす教材に繋がるよう、よりもっと基礎の土台となる部分を助けるべく、オリジナル教材(ちのとれ教材)を作るに至ったのです。 

一見鉛筆も持てて、あいうえおが書けるお子さんでも、分野によって極端に出来ない場合は、凸凹を無くすべく、その手前の土台となる具体物での介入を心がけています。